フロレンツィに届け
最近、イタリア各紙がローマのヴィティー二アに生まれ、ASローマの下部組織出身で今季同クラブの主将を務めているアレッサンドロ・フロレンツィが1月にローマを退団する可能性があると報じ始めました。まだ1月まで少々時間があるしデマの類なのかなと思っていたのだけれど比較的情報の確度が高いと思われるSky Sportの記者、ジャンルカ・ディ・マルツィオさんまで「彼は将来について熟考しており、出番の少ない現状が続くならユーロ出場を見据え、1月に出番を求めてローマを離れる可能性がある。」というようなことを報じ始めたのであながちデマでもなさそうな気がします。
いわゆるローマっ子でASローマの下部組織出身であり長年ファースト・チームに定着していた選手の退団報道は過去にもありました。近年だとアルベルト・アクイラーニ、フランチェスコ・トッティ、ダニエレ・デ・ロッシがすぐに思い浮かびます。
アクイラーニは今でも決して裕福とは言えないASローマが更に貧しく経営破綻も囁かれるような状況下に置かれていた頃にクラブの財政を助ける為に断腸の思いでリヴァプールに行ってくれたという印象があり、本人はもちろん、チームメイト、フロント、全員が悲しみながらなくなくお別れをしたと記憶しています。
トッティは監督やフロントと確執めいたものがあり、高齢であったことも相まって当初は契約更新を提示されてもらえなかったけれど自力で契約更新を勝ち取り一度はASローマ退団の危機を回避しました。けれど結局はフロントの意向でASローマ退団か現役引退をしてのフロント入りかの2択を迫られ後者を選択しました。
デ・ロッシもトッティと同じくフロントの意向でASローマ退団か現役引退をしてのフロント入りかの2択を迫られ前者を選びました。
彼ら3人は本人の意思に反してASローマを去ることになったという印象があるけれど、今回のフロレンツィの退団報道はそれとは違うようです。本人が出番を求めてローマを去ることを検討していると言われているのです。新しいパターンです。
フロレンツィは開幕当初は右SBのレギュラーとして試合に出場していました。ところが次第に当初は左SBのコラロフのバック・アッパーとして計算されていたであろうスピナッツォーラに出番を奪われるようになりました。じゃ、2番手かなと思ったけれどフォンセカさんの中で2番手はサントンのようでフロレンツィは現状右SBの3番手に位置しているようです。
フロレンツィの強みの一つに複数のポジションをこなせるというのがあるのではないかなと思います。近年はSBを主戦場としている彼だけれど元々はメッザーラの選手だし他にもWGやトレクワルティスタもこなせます。けれど他のポジションにおいてもフォンセカさんの中で彼の序列は低いらしく他の選手が優先して使われている現状です。
どのポジションにおいてもフォンセカさんの中で序列が低いことははっきりいってフロレンツィにとって大ピンチだと思います。特に気になるのは最初はスタメン起用されていたのに徐々に出番を失ったという点です。これはフォンセカさんが「最初は行けるかなと思ってフロレンツィを起用してみたけれど、なんかしっくりこないな。」と思ってる可能性がありそうです。私は人が一度試してみてダメだと思った評価を覆すのは相当に困難なことだと思います。これはヤバイと思います。
トッティが出番を失った時はどちらかというと実力は一番だけれど監督との確執で出番を失ったという印象がありました。だから私は必死にトッティに出番を与えてくださいと思えました。けれど一度試してみてダメだと思ったなら話は変わってしまいます。それはフロレンツィがフェアな競争の中で敗れたということになります。そうなると私は必死にフロレンツィに出番を与えてとは思えなくなります。そう思うことは頑張ってポジションを獲得したスピナッツォーラやサントン、他の皆に失礼だと思うからです。
しかしフロレンツィがフェアな競争の中で敗れたのなら仕方ないと思う一方で私はASローマの魅力の一つに下部組織出身のローマっ子がファースト・チームで主将を務めスタメンをはるというものがあるとも思っています。フロレンツィはまさにこれに当てはまる選手でこのASローマの魅力が末永く続いて欲しいと強く思っています。完全なジレンマです。だから今はとても辛いです。
またタイミングの悪いことに来夏にはユーロがあります。ユーロといえばワールド・カップに次ぐ大会です。しかも今イタリア代表は絶好調でユーロ優勝も狙えるかもしれません。フロレンツィも是が非でもユーロに出場したいのだろうなと思います。ユーロに出場する為には継続的なプレイが必要不可欠です。このことがフロレンツィの考えに大きな影響を与えている可能性があります、ユーロめなんて間の悪いやつなんだ。ちゃんと空気を読むのです。
苦肉の策として冬にレンタルでローマを去り、他所で出番を確保して夏に戻り再起を図るというのも悪くはない気がします。けれど若手でもない選手が一度ASローマを去ると大抵はそのまま退団というパターンが多い気がします。ましてや近年のフロントはローマっ子を疎ましく思っている節があるのでたぶんレンタルは苦肉の策になりえません。
これは困りました。私のジレンマはどうすれば良いのでしょう?突き詰めていくと私の思いは
今君は出番が少なくて将来について考えているのかもしれない。でもねよく考えて。ローマ人がASローマの腕章を巻くなんて誰にでもできることじゃない選ばれた者だけの特権なんだよ。長いシーズン、チャンスは必ずくる。それを生かすも殺すも君次第。君次第なんだ。 https://t.co/RtfNl1WY0P— AS ROMA電子報告 (@asroma_dempo) 2019年11月14日
ここに行き着きました。長いシーズン、チャンスは必ずあるはずなのです。やはりフロレンツィには辛抱強くチャンスを待って実力でポジションを奪回してもらう他ありません。前述のように人が一度試してみてダメだと思った評価を覆すのは相当に困難なことだと思います。きっと他所のクラブに行った方が簡単だと思います。けれどそれは大きな物を失うことになると思うし何より美しくありません。私は美しいものが好きです。トッティやデ・ロッシは逆境を実力で跳ね返す美しい物語を幾度となく見せてくれました。それを間近で見てきたフロレンツィも美しい物語を選んでくれることを願うばかりです。
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