ペドロのS.S.ラツィオ移籍に思うこと
日本時間で一昨日の夜、S.S.ラツィオはこともあろうにASローマからペドロことロドリゲス・レデスマ・ペドロ・エリエセルを完全移籍で獲得したことを公式発表しました。
👀 Introducing our new number 9️⃣#CMonEagles 🦅 pic.twitter.com/xVUyxVqZvJ
— S.S.Lazio (@OfficialSSLazio) August 19, 2021
✍️ We're delighted to announce the signing of @_Pedro17_!#CMonEagles 🦅 pic.twitter.com/VOFl1NryZo
— S.S.Lazio (@OfficialSSLazio) August 19, 2021
私が知る限り噂が浮上してからわずか3日ほどで成立した電撃移籍でした。
知らない方のために説明しておくとS.S.ラツィオとASローマは同じイタリア・ローマに本拠地を置くライヴァルで、そのサポーター達のライヴァル意識も主観だと世界でも有数の激しさです。そういう相手のところにペドロは移籍しました。
私は怒り心頭に発するってペドロのために使う言葉だったのですね。ラツィオ教えてくれてありがとう!と思いました。
いえ、正確に言えば怒り心頭に発するってS.S.ラツィオとASローマとペドロのために使う言葉だったのですね。3人とも教えてくれてありがとう!と思いました。
何故なら移籍というのは当事者達(この場合はS.S.ラツィオとASローマとペドロ)全員が同意して初めて成立するからです。
つまり
・ASローマはライヴァル関係のS.S.ラツィオへペドロを放出する事に同意
・S.S.ラツィオはライヴァル関係のASローマからペドロを獲得する事に同意
・ペドロはASローマからライヴァル関係のS.S.ラツィオへ移籍する事に同意
この三つが揃うということです。
そんなことあって良いの?ライヴァル関係なのに?ライヴァル関係って例え死んでも相手に施しはしないし、相手からの施しも受けないというような関係を言うのではないの?理解不能なのだけれど。と私は思いました。
メディアによれば三つが揃ったロジックとはこういうものだそうです。
まず前提としてペドロはメディアの予想に反してASローマのジョゼ・モウリーニョ新監督の構想外となり、移籍先を探していました。そしてASローマは選手の人件費削減が大きな目標でした。
そんな中でペドロがチェルシー時代に彼を指導したマウリツィオ・サッリ監督がベンチにいるS.S.ラツィオに提案されました。そしてペドロはサッリさんに強く望まれました。
ペドロはサッリさんの事がとても好きで行き先を歓迎し、彼はASローマにS.S.ラツィオへの放出を要求しました。
チェルシーでの一緒の1年間を通じて固められた二人の素晴らしい関係性、これが交渉成功の根幹となったそうです。
一方のローマはペドロを国外に放出することを考えていましたが、そうしてしまうと成長令(選手の給与に関する税制面での優遇措置)における利点を失い、350万ユーロの補償金を州に支払わなければなりませんでした。これが国内のラツィオに放出すると350万ユーロの補償金を支払うことなく、ペドロの人件費を削減できるわけです。
こうして三者の思惑が一致しペドロは無償(ただしASローマはS.S.ラツィオから出場数や特定の目標達成に関するボーナスを受け取る)でASローマからライヴァル関係のS.S.ラツィオへ移籍する事になったそうです。なおS.S.ラツィオはペドロと2年契約を結び、2年間で税込み年俸、総額800万ユーロを負担する事になるといわれています。
なるほど、ロジックは分かりました。
けれど、けれどです。当事者達の中で
でも、流石にこれは不味いよね?
という人はいなかったのでしょうか?
貴方達はライヴァル関係なのですよ?
現代では感情よりロジックが優先されることはわかっているつもりです。
ASローマのカピターノ(キャプテン)であるロレンツォ・ペッレグリーニがS.S.ラツィオのチーロ・インモービレとプライヴェートで仲良しなことも知っています。
それでも超えてはならない一線ってものがあるのではないでしょうか?
私はカルチョ(サッカー)はエンターテイメントであると考えています。
そして『それいけ!アンパンマン』においてバイキンマンのやられ際の台詞が常にバイバイキーンであるように、ドキンちゃんが常にしょくぱんまん様に憧れているように、エンターテイメントであるならば守らなければならない形式美があると思います。
ASローマとS.S.ラツィオのライヴァル関係において守らなければならない形式美
それこそが
両クラブ間で直接の選手の移籍はしない
であると考えます。
それを貴方達はいとも簡単に破りました。
僅か三日間で何の躊躇もなく。
かつて世間がスーパーリーグで揺れた際ASローマはいくつかの物はお金よりも大切だとしていち早く反対の姿勢を表明しました。
先人達が守ってきた形式美はお金より大切ないくつかの物には含まれないのでしょうか?
確かに両クラブ間の直接の選手の移籍はこれが初めてのことではないけれど、それでも40年近くは守られてきたのです。
La Repubblicaによるローマ🐺とラツィオ🦅間の直接移籍一覧。左→右に移籍
— AS ROMA電子報告 (@asroma_dempo) August 19, 2021
1934 🐺Attilio Ferraris🦅
1972 🐺Sergio Petrelli 🦅
1976 🐺Franco Cordova🦅
1981 🐺Michele De Nadai 🦅
1982 🦅Carlo Perrone🐺
1985 🐺Astutillo Malgioglio🦅
2021 🐺Pedro🦅
Twitterを眺めると今回のことをなんとも思わないローマ・ファンの方もいます。理由としては僅か1年しか在籍しておらず、それも期待されたほどの活躍をしたとは言い難いからそれほど気にならないという趣旨のものがありました。私が行ったTwitterのアンケートでも実に33.2%もの方が今回のことはOKだと答えてくれました。
ペドロのラツィオ直接移籍は
— AS ROMA電子報告 (@asroma_dempo) August 19, 2021
けれど、私はそういう気持ちにはなれそうにないです。
私はペドロが好きでした。小ちゃくて可愛いのに凄いミドル・シュートを決めるペドロが大好きでした。今回の噂がでたとき、レアル・マドリードとの激しいライヴァル関係にあるバルセロナで育った彼ならきっと関係に配慮して断ってくれるに違いないと期待していました。それが断るどころか満面の笑みでS.S.ラツィオのタオル・マフラーを掲げて写真に収まるなんて。せめて申し訳なさそう顔をしていて欲しかったです。好きな選手に裏切られた分、悲しみが深いです。
私は美しいものが好きです。
私は美しいものに惹かれ、憧れ、夢中になります。
私にとってASローマとS.S.ラツィオのライヴァル関係は美しいものでした。
公式SNS上で両クラブが煽り合い、試合に勝てば、勝ったほうが街は我々のものだと宣言する。
ライヴァルとはこうでなくてはと夢中になっていました。
けれど私は夢から覚めてしまいました。
今後そういうものを見ても夢中にはならないでしょう。
いやいや、君達そんなこと言っているけれど、簡単に選手を売ったり、買ったりする間柄だよね?実は仲良しだよね?
もうそうであると知ってしまったからです。
何がライヴァルですか!
この嘘つき!
私にとってライヴァルとは
例え死んでも相手に施しはしないし、相手からの施しも受けないというような関係
でなければなりません。
だからこそ勝った時の喜びは倍増し、負けた時は人目も憚らず泣きたくなるのです!
それが美しいのです。それが楽しいのです。
どうしても売らなければならないなら、せめてもっと躊躇してください!!
嫌で嫌でたまらない感を出してください!!!
いえ、それでは生温い。
やはり売る寸前までいきながらも、三日三晩悩み、例ば破産したとしてもライヴァルに施しをするわけにはいかないと思いたつべきだったのです!!!!
間違ってもS.S.ラツィオに移籍する選手に
Grazie
などという感謝の言葉なんて使わないでください!!!!
Pedro ceduto a titolo definitivo alla Lazio.
— AS Roma (@OfficialASRoma) August 19, 2021
Grazie per la stagione vissuta insieme in giallorosso, @_Pedro17_! #ASRoma pic.twitter.com/TAnCRZLNTX
そんなのライヴァル関係じゃない!
ただの仲良し!!!
私が惹かれ、憧れ、夢中になったライヴァル関係じゃない!
守るべき形式美も守らず、仲良しであることを隠そうともしない。
完全なるライヴァル関係への冒頭です。
二度とライヴァル関係だなんて言わないでください!!!
私が愛した美しいライヴァル関係は汚されてしまいました。
それも子供達にサンタクロースなんていないよ?と囁くような卑劣なやり方で!!!
ひどい!ひどすぎる!!
3人のひとでなし!
鬼!悪魔!!!
今、私は怒り心頭に発しています。
この怒りはおさまらないでしょう。
今季のS.S.ラツィオとの試合では全てペドロが先発フル出場し、かつペドロに何もさせず、3-0で勝つくらいのことをしてくれない限り。
どうか、神様が貴方達に天罰を与えてくれますように。
それによって貴方達が悔い改め、ライヴァル関係の美しくさのなんたるかに気付いてくれますように。
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