アタランタのパロミーノとミランのジルーから学ぶオフサイドのルール

 

2021/22セリエA第18節アタランタ対ローマ戦後アタランタのガスペリーニ監督は

「説明を願いたい、パロミーノはボールに触れておらず、存在しなかった彼のタッチのせいでゴールが取り消された。オフサイドが発生するでしょうか?ここではルールが曲解される。」

と述べました。監督が言及しているのがVARでオフサイド判定となりアタランタのゴールが取り消しになったこちらのシーン(1分53秒~)です。


確かに映像を見るとボールに触れているのはクリスタンテであってパロミーノはボールに触れていないように見えます。

けれどSky Sportによるとこのオフサイドはパロミーノがボールに触ったためにオフサイドになったわけでなくボールに触っていなくともパロミーノはゲームに関与しておりオフサイドは正しい。規則を引用するとオフサイドは

”相手競技者のプレイすること、またはプレイできる状態を妨げたり、明らかに相手競技者の視界を妨げたり、ボールを争奪したり、この行為が相手競技者に影響を与える時に近くにあるボールを明らかにプレイしようと試みたり、相手競技者のボールをプレイする能力に明らかに影響を与える明らかな行為をすることで相手競技者に干渉する”

場合に発生する。これは審判の解釈を必要とするルールではあるが2選手が接触すると実質的に自動で発生する。このケースだとサパタのヘッドの瞬間、そして次にクリスタンテが自軍ゴールにボールをそらす時、パロミーノはクリスタンテの背中の上に右手がある。よってオフサイドが発生する状況なのである。ただこのオフサイドがオフサイド・ポジションでの攻撃者の干渉を評価する必要がある場合に常に行われるべき "on field review"でイッラーティ主審が判定したのではなく、VAR担当審判のナスカさんによって判定されたものであることは問題だとのことです。

上記のSky Sportが引用した規則の部分をJFAのサッカー競技規則2021/22で確認してみると

第11条の2項に

”ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた(※)瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる。

 ※ボールを「プレーした」か「触れた」最初のコンタクトポイントを用いるべきである。

・味方競技者がパスした、もしくは触れたボールをプレーする、または触れることによってプレーを妨害する。または、

・次のいずれかによって相手競技者を妨害する。

  ・明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする。または、プレーする可能性を妨げる。または、

  ・ボールに向かうことで相手競技者に挑む。または、

  ・自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。または、

  ・相手競技者がボールをプレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をとる。

または、

・その位置にいることによって、次の場合に、ボールをプレーして利益を得る、または相手競技者を妨害する。

  ・ボールが、ゴールポスト、クロスバー、審判員もしくは相手競技者からはね返った、またはそれらに当たって方向が変わってきた。

  ・相手競技者によって意図的にセーブされた。

オフサイドポジションにいる競技者は、相手競技者が意図的にプレーしたボールを受けたとき、意図的なハンドの反則を犯した場合も含め、利益を得ているとはみなされない。ただし、意図的なセーブからのボールを除く。

「セーブ」とは、ゴールに入りそうな、またはゴールに近づいたボールを競技者が手や腕(自分のペナルティーエリア内でゴールキーパーが触れた場合を除く)以外の体のいずれかの部分を用いて止める、または止めようとすることである。

次の状況では、

・オフサイドポジションから移動した、またはオフサイドポジションに立っていた競技者が相手競技者の進路上にいて相手競技者がボールに向かう動きを妨げた場合、それにより相手競技者がボールをプレーできるかまたはチャレンジできるかどうかに影響を与えていれば、オフサイドの反則となる。その競技者が相手競技者の進路上にいて(相手競技者をブロックするなど)相手競技者の進行を妨げていた場合、その反則は、第12条に基づいて罰せられるべきである。

・オフサイドポジションにいる競技者がボールをプレーする意図をもってボールの方へ動いたが、ボールをプレーする、プレーしようとする、またはボールへ向かう相手競技者にチャレンジする前にファウルされた場合、オフサイドの反則より前に起こったファウルが罰せられる。

・既にボールをプレーした、もしくはプレーしようとした、またはボールへ向かう。相手競技者にチャレンジしようとしたオフサイドポジションにいる競技者に対して反則があった場合、ファウルより前に起こったオフサイドの反則が罰せられる。”


とあり背景色が白い部分が引用箇所と思われます。またガスペリーニさんは規則の

・味方競技者がパスした、もしくは触れたボールをプレーする、または触れることによってプレーを妨害する。

この部分からオフサイドはなかったと主張しているもの思われます。

また同じく2021/22セリエA第18節のミラン対ナポリ戦でもケシエのゴールがVARの末オフサイド判定となり、物議をかもしました。それがこのシーン。


Sky Sportによるとオフサイド・ポジションにいるジルーはボールに触れておらず、ナポリのDFジェズスだけがボールに触れているが、アタランタ対ローマ戦と同様の理屈で2選手が接触しているためオフサイドが発生する。またアタランタ対ローマ戦と違いちゃんとマッサ主審が"on field review"で判定しているので手順的にも問題ないとのことです。ちなみに状況的には

ボールを争奪したり、この行為が相手競技者に影響を与える時に近くにあるボールを明らかにプレイしようと試みたり、相手競技者のボールをプレイする能力に明らかに影響を与える明らかな行為をすることで相手競技者に干渉する

に該当するそうです。

またこの判定に関して他紙はどうみているかというと

とのことです。


最後にこの二つの判定に関してSky Sportは

AIA(イタリア審判協会)はアタランタとミランのゴールの取り消しにおいてイッラーティさんとマッサさんが下した決定が正しいことを認める。審判達は満点を支持する一方でベルガモでのVARのミスのせいでナスカさんは長期職務停止の恐れがある。そのミスとは彼がパロミーノのボール・タッチがあったと合図を送ったことだ。

ベルガモでは重大なミスがあったが、ベルガモでもミラノでも最終的な判断は正しかった。

UEFAとFIFAの行動指針に沿ってAIAの評価はこの結論で終わった。アタランタとミランのゴールが取り消された理由はこうだ。

オフサイド・ポジションにいる攻撃者と守備者の間でフィジカル・コンタクトがあるとき、相手に干渉する明確な意図があるかどうかにかかわらず、攻撃者は罰せられると考えられるべきだ。つまり、パロミーノがクリスタンテの背中に手をかけたこと、そしてジルーとジェズスの間の接触、その上ミランの選手の脚の動きが追加された接触はアタランタとミランのゴールの取り消しを正しいと考えるに十分なものであると言える。

ただベルガモではナスカさんのVARでミスがあった。実際VARの部屋でナスカさんは存在しないパロミーノのボール・タッチを目にしていたのだ。このためミラノでVAR担当審判のディ・パオロさんが主審のマッサさんにしたように義務のon field review"での検証を求めずに、オフサイドの判定をイッラーティさんに伝えるだけに留まったのであった。もし、背中に手がなかったら、大変なことになっていただろう。このためナスカさんとVARのアシスタントを務めたトルフォさんは長い間じっとしていることになる。特にモニターの前では、うわべだけの判断は許されないのである。一方でミラノのディ・パオロさんとマッサさんはそれぞれのレフェリングで満点を獲得した。

とまとめています。


オフ・サイドのルールって難しいですね。

以上です。


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