デ・ロッシへ贈る言葉


デ・ロッシから別れのお手紙
何故笑っているの、坊や?

幸せだからだよ。

何故幸せなの?

ローマのユニフォームを身につけているからさ。

でも、それは偽物でしょ?

違うよ!叔母さんが背番号を縫ったんだ。

それじゃあ、もしあなたは600回以上そのユニフォームに袖を通すことになるよって言ったら?

僕には一試合だけでも十分だよ!


みんなが良く知っている、坊やの頃の僕の写真を振り返ってみると、僕がどれほど幸運であったか ー 僕が予想したことのないほどの幸運で決して感謝しきれないであろう事に気付く。それは常にこのチームへの愛を伴う、長く激しい旅だった。


僕はこの感謝の気持ちを宙に置いたままにしたくない。何故か感謝の言葉を書くとき、抽象的な概念は頭に浮かんでこず、記憶や感情、人の顔や声が浮かぶ。

僕が出会った全てのローマの人々に感謝を言わせてもらう。

センシ・ファミリー、パロッタ会長。

トリゴリアで働いてきた、そして働き続けている全ての女性と男性

僕を導いてくれたコーチたち、彼らは全員、例外なく、僕に重要な何かを教えてくれた。

僕をケアしてくれた医療スタッフ、ダミアーノ、彼なしではこのユニフォームを着ての出場は間違いなく少なかっただろう。

僕の仲間達、僕の仕事の最も奥深い部分、彼らは僕の家族だ。トリゴリアのロッカー・ルームでの生活の日々は最も恋しいもののひとつになるだろう。

ブルーノ、僕の中の何か特別な物を見て、僕をこの素晴らしいユース・セクターに連れてきてくれた。8月のある朝、そこで僕はこれまで僕の傍らに居続けてくれ生涯にわたってそうあり続けてくれるであろうシモーネとマンチョにであった。

ダヴィデ(故ダヴィデ・アストーリのこと)に感謝を。君が僕の残りの人生においても僕と共にあるだろう事は分かっているよ。

フランチェスコに感謝を。僕が身につけた腕章は僕がこれまで見てきたこのユニフォームの中で最も特別な選手で、偉大なカピターノであり、僕の兄弟である君から譲り受けた。誰もが16年間もみんなのアイドルの隣でプレイできるわけじゃない。僕は敬意とともにこの腕章をフロレンツィに返すよ。きっとその名誉に値するもう一人の兄弟にね。

自分がして欲しくないことを他人にしないこと。困難にある人に手を差し伸べること。日々僕と共にある二つの価値観を伝え育ててくれた父と母に感謝を。

オスティア(デ・ロッシの故郷)、そこに住む人々その海辺に感謝を。幼い頃の僕を乳離れさせ、思春期の僕に寄り添いそして大人になった僕を再び迎え入れてくれた。

家の中で僕を支え耐えてくれた君らにも感謝を。ガイア、オリヴィア、ノア、そしてとりわけサラがいなければ、今の僕は半身になるだろう。

ローマのファン達、僕のファン達にも感謝を。今日、僕は自分に君たちを僕のファン達と呼ぶことを許すよ。何故なら、君たちが僕に与えてくれた愛は僕をピッチの中の君たちの一員であり続けさせてくれたからね。僕がこの街、この生き方を繰り返し選んだ理由の全ては君たちだった。日曜日は僕がその選択、最高の選択をする616回目になるだろう。

数年前の5月26日、僕たちはその日を過ごした後、二度と笑顔になることはできないだろうと思った。僕もそう思った。"27 maggio 2013, eppure il vento soffia ancora.(2013年の5月27日、それでも風はまた吹きあれる)"ていうファンのタトゥーを見るまではね。誰のタトゥーかはわからないけれど、ぼくはこの5月27日からまた風が吹き始めることを知っている。

この数日間ほど君たちの愛情を感じたことはなかった。それは僕を飲み込み、僕の心を満たした。この数日ほど君たちがあることのために団結したの見た事はなかった。今君たちが僕に与えられる最高の贈り物は怒りを脇に置き、皆で一緒に僕達の心にあるもの、あらゆるものの先に来る唯一のもの、ローマを後押しする為に再び風を吹きあらし始めることだ。

僕以上に君たちを愛する者は誰もいないだろう。

また、会おう。

ダニエレ・デ・ロッシ




遂にこの日が来てしまいました。少し前まではこんなことになるなんて夢にも思いませんでした。私は貴方に会ったことはないけれど、貴方の周囲の人達の話、貴方が残してきた逸話たち、そしてこの手紙を読めば貴方が如何に思慮深く、愛情に溢れた素敵な人であったか容易に想像できます。と同時にそんな想像からかけ離れた、感情を剥き出しにして吼え、時に愚行を犯してしまうほどの闘志溢れたピッチ上の姿をみて貴方のローマへの、そしてカルチョへの情熱の計り知れなさを思い知るのです。多くの人は貴方との別れに"Grazie"と感謝の言葉を贈ります。貴方がこれまでローマのためにしてくれたことを考えると当然だと思います。けれど私にはその言葉は贈れません。その言葉は美しい別れにこそ相応しいと思うからです。これは美しい別れではありません。これは私にとって貴方の望まなかった、そしてある者を除いて誰も望んでいないであろうそれとは対極に位置する別れなのです。そもそも私には感謝の言葉を贈る資格がないのです。ローマは貴方から計り知れない物を奪います。私はそれに怒りにも似た悲しみを覚えます。けれど私はすぐに今抱いている感情を忘れローマに擦り寄るでしょう。トッティ達でしてきたように。私は最低なのです。だからこのような別れに相応しく、最低な私が贈ることのできる言葉は断じて感謝の言葉ではなく”Mi dispiace"、謝罪の言葉です。ごめんなさい、デ・ロッシ。本当にごめんなさい。私を許してください。


コメント

  1. おおかみ司書さんこんばんは。

    僕はもうデ・ロッシがこう言っているのだから、それで良いのじゃないかと思います。
    ちょっと違う方向に風が吹いただけ、ローマに向けて風が吹けばまた戻ってくるのだから。
    この後、少なくとも選手としてはローマでの最後になるであろう雄姿を見届けたいと思います。
    幸いスカパーでも放送があるのでちゃんと録画保存できるのですよね。ありがとうスカパー。
    去年はトッティの特番を放送してましたが、デ・ロッシの特番も制作してくれてもいいんですよ。(笑)

    ところで、センシ・ファミリーとパロッタさんの名前はあるけどベネディットさんの名前がないのは1年ちょっとしかいなかったから感謝するほどの事はなかったんでしょうか。(笑)

    返信削除
    返信
    1. にょろろさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

      >ちょっと違う方向に風が吹いただけ、ローマに向けて風が吹けばまた戻ってくるのだから。

      すごく素敵な表現なのです。ちょっと前にお別れしたばかりだけれどもうすでにローマに向けて風が吹く日が待ち遠しいです。

      私はdaznの放送で見たけれどスカパーの放送も録画しました。特番も放送してほしいです。

      そういえばベネディットさんの言及がありませんね。うっかりミスかな(笑)

      削除

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