FFP、ローマは何故選手を売却しなければならないのか?
ローマは6月30日までに選手を売却し、メディアによって金額に差があるけれど、およそ3000万~4000万ユーロのキャピタルゲインを生む必要があると言われています。
それは何故でしょう?
その答えはローマがFFPのブレイク・イーブン要件を満たせなかったことに関してUEFAと締結した和解協定(詳細はこちら)にあるとされています。
ローマはこの和解協定の対象期間(4年間)でFFP改めFSR(Financial Sustainability Regulations)に準拠できるようにしなければなりません。
なお、FFP、FSRとは何?という方は下記の記事が参考になるかと思います。
その和解協定の中に
クラブは2025/26シーズン(すなわち2024年および2025年に終了する報告期間を対象とする)に評価される通算サッカー収益の結果が総額6000万ユーロの赤字を超えないようにするために和解協定によって対象とされる報告期間の中間財務目標に取り組む。
とあり、この中間財務目標の達成のために3000万~4000万ユーロのキャピタルゲインを生む必要があるのだろうと言われているのです。
この中間財務目標の中身は公表されていないため具体的なことは不明です。
ただ2021/22シーズンのローマの貸借対照表が2億1930万ユーロの赤字を記録していたことからもキャピタルゲインを作らなければならないのは事実だろうと言われています。
そして最も手っ取り早くキャピタルゲインを作る方法が選手の売却になります。
ここでいうキャピタルゲインとは売却益のことになります。
では問題です。
移籍金600万ユーロで買った選手と6年契約を結び、2年後に800万ユーロで売却したとするとキャピタルゲイン(売却益)はいくらになるでしょうか?
えーっと売却益だから…800万-600万で答えは
200万ユーロ!
となりましたよね?
私はなりました。
けれど計算はもう少し複雑になります。
それを説明した物がこちらです(埋め込みTweetが上手く表示されない場合はこちらをタップしてください。)
ユーヴェがしたとされる選手の移籍による見せかけのキャピタルゲイン(売却益の水増し)が何か分からないという方がいたのでごく簡単に説明すると以下のようなことを3年間で42件したとされています。 https://t.co/Xstjlj0mxC pic.twitter.com/6CXrN7KIHu
— AS ROMA電子報告 (@asroma_dempo) January 23, 2023
つまり
移籍金600万ユーロで買った選手と6年契約を結び、2年後に800万ユーロで売却したとするとキャピタルゲイン(売却益)は
上の4枚目の画像の理屈により
800万-400万(選手の帳簿上の価値)=400万
となります。
ちなみ減価償却費を計算する上での移籍金とは獲得に付随する費用(代理人手数料等)も含みます。なお減価償却には定額法または定率法(契約終了まで毎年均等に償却する方法、または初年度に多めに償却し、その後契約終了に向けて徐々に下げていく方法)がありますが、サッカーにおける減価償却は定額法で説明されていることが多いのでここでは定額法に基づいています。
また最近のローマの補強をみるとフリー・エージェントでの獲得が多いですよね?
実はこれの理由もUEFAと締結した和解協定にあるとされています。
それが和解協定の中にある
List A Balanceが黒字でない限り、新しい選手のUEFAリストへの登録禁止
です。
List A Balanceとは退く選手のコストとその後任選手のコストの差額のこと
これは分かりやすく言い換えると
List Aに登録する選手の合計コストは前回のList Aの選手の合計コスト以下でなければならない
という制約です。
ローマが22/23のUEL決勝トーナメントに臨むList Aの登録メンバーを発表した際に一度はソルバッケンが含まれ、後に外されたのはこの制約が原因で、最初に発表したList Aは前回(22/23のUELのグループ・ステージに臨む際)のList Aの選手の合計コストを上回ってしまうことが判明したため、選手を1人外さざるを得ませんでした。
List Aの選手のコストは減価償却費と総額(税込)年俸で構成されます。
例えば移籍金2000万ユーロで獲得し、総額年俸250万ユーロで5年契約を結んだ選手がいたとしましょう。この選手のコストは
減価償却費は移籍金(代理人手数料等の付随費用を含む。)を契約年数で割ったものなので
2000万÷5年間=400万
なので減価償却費は400万ユーロ
これに総額年俸を足すと
400万+250万=650万
よって650万ユーロがこの選手のコストとなります。
ちなみに選手が契約更新をした場合は新たな契約年数で償却していきます。
例えば移籍金2000万ユーロで獲得し、5年契約を結んだ選手が2年経ち1年間契約更新をしたとします。その場合は
2000万÷5年間=400万
が年間の償却費なので2年経つと
400万×2年間=800万
2000万-800万=1200万
1200万ユーロが選手の帳簿の価値=未償却残高になります。
この1200万ユーロを新たな契約年数で割ります。
この場合の新たな契約年数は
残りの契約年数3年+1年間の延長=4年
1200万÷4年間=300万
となり契約延長前に比べ減価償却費が100万ユーロ少なくなります。
話を戻すとフリー・エージェントの場合は代理人手数料等はかかるものの相手クラブに移籍金を支払う必要がないためこの減価償却費がほぼ0になります。
つまり選手登録の際に計算されるコストがほぼ総額年俸のみになるのでList Aへの登録が非常にしやすくなるのです。
これが最近のローマがフリー・エージェントでの獲得が多い理由のひとつと言われています。
ただひとつ注意しなければならないことがあります。
それは合計コストを下げすぎないことです。
なぜなら新シーズンのUELのグループ・ステージに臨むList Aの選手の合計コストがその次の基準になるのでここで合計コストを下げすぎてしまうとその次の登録の難易度が上がってしまうからです。
なので理想は前回の合計コストと一致させることになります。
というわけでローマの移籍市場を一手に担うピントGMに課せられたこの夏の使命は三つになるかと思います。
1、6月30日までに選手の売却によるキャピタルゲインを作る(3000万〜4000万ユーロ?)
2、前回のList Aの合計コストを上回らないようにする。かといって下回りすぎてもいけない。
3、上記のミッションをこなしつつモウリーニョさんが機嫌を損なわないような補強する。
胃が痛くなりそうですね。私がピントさんだったらすぐ辞表を提出して、ヴァカンスに行きます。
ピントさん、ファイト!
コメント
コメントを投稿