交通事故も起こすが奇跡も起こす男、ブルーノ・ペレス
2016年8月16日、その男はトリノから鳴り物入りでローマに加入した。総額1500万ユーロ(1250万ユーロの買い取り義務付き100万ユーロの有償レンタル+最大150万ユーロのボーナス)という大金、ブラジル代表のレジェンド、マイコンとも比較され極めつけはSerie A TIM 2014/15第13節ユヴェントゥス対トリノ戦での
1分20秒~
このゴールである。彼への期待値は高かった。これでローマの右SBは安泰、いやローマで飛躍し1~2年後にはいつものようにメガ・クラブへ引き抜かれてしまうな。多くの者にそう思わせたであろう男、それがブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスだった。
しかし彼は飛躍しなかった。飛躍しかけたことは何度かあったが決して飛躍はしなかった。
飛躍しかけた時のブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレス(37秒辺りから)
In bocca al lupo Bruno!#ASRoma pic.twitter.com/1jokA3qhhX— AS Roma (@OfficialASRoma) July 16, 2018
飛躍しなかっただけではない。彼は交通事故を起こした。それも2度だ。1度目は2016年11月、レンタカーのポルシェで事故を起こし車を破損。しかもイタリアで運転する為に必要な国際運転免許証を持っていなかった。2度目は2018年2月ランボルギーニ アヴェンタドールで単身事故を起こし車を破損、しかも酒気帯び運転だった。
2度目の事故の写真
#BrunoPeres si schianta con la #Lamborghini Incidente all'alba alle Terme di #Caracalla: ecco le immagini [FOTOGALLERY] https://t.co/IYNHq92jtR @OfficialASRoma #Roma pic.twitter.com/1xpTWl55cC— IL TEMPO (@tempoweb) February 5, 2018
そうか、貴様はタッデイ(真面目で物静かなブラジル人)ではなくアドリアーノ(不真面目で陽気なブラジル人)であったか。ならば仕方あるまい、ピッチで飛躍できず社会のルールが守れない男が辿る運命は一つしかない。そうレンタル移籍である。
こうしてブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスは2018年7月6日、ブラジル、サン・パウロへと旅立った。
イタリアでの挫折、慣れ親しんだ母国ブラジル、これは良く見る復活を成し遂げるには最適の状況、流石に彼も活躍するであろ。活躍して戻ってくるがよろし。私はそう望んだ。
しかし私は甘かった。彼は只者ではなかった。まったく活躍しなかったのである。そして2018年7月6日、サン・パウロはブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスのブラジル2部スポルチ・レシフェへのレンタル移籍を発表した。
・・・・・・まっ、まぁ、そういうこともあるであろ。世の中そうそう思い通りには行かないものである。プレッシャーの少ない場所で活躍して戻ってくるがよろし。私はそう願った。
出場1試合。たった47日間。これがブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスがブラジル2部スポルチ・レシフェで過ごした時間だった。私は唖然とした。開いた口が塞がらなかった。もはやサッカー選手としての人生は鬼籍に入った。安らかに眠れ。私はそう祈った。
しかしこの男やはり只者ではない。ブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスは母国ブラジルで磨き続けていた。アピール力という名の武器を。
ローマ復帰を目論み抜け目無く自主連アピールをするブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレス(Corriere dello Sportより)
ないない、流石にない。そんなアピールをした程度ローマに復帰できるほど世の中あまくないであろ。ブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレス、男なら潔く諦めるがよろし。私はそう思った。
しかし彼は天上から垂らされた蜘蛛の糸を手繰り寄せる強運の持ち主であった。糸を垂らした蜘蛛の名はジャンルカ・ペトラーキと言った。この蜘蛛はブルーノ・ペレスを高値でローマに売りつけおいしい思いをしたことがあった。その恩をここで返そうと思ったのか、はたまたただの気まぐれか、蜘蛛の考えゆえにそれは誰にもわからないだろう。
蜘蛛の糸を登ろうとするブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスにジャンルカ・ペトラーキなる蜘蛛は告げた。これが最後のチャンスであり最初のエラーで追い出されるであろうことを。
実に厳しい言葉である。糸を垂らしたのなら励ましの言葉をかけるのが普通であろ。優しさを見せるがよろし。私はそう憤慨した。
しかしこの蜘蛛、表ではこういっておきながら、裏では彼を安定させるため彼の家族もイタリアの首都に引越しさせるように命じ、しばらくの間彼がちゃんと家にいるか確かめる為真夜中に電話した。
これが数々の女性を口説き落としたイタリア産蜘蛛の手口。必殺「ツンデレ」ある。二次元で生み出されたこの必殺技を三次元に持ち込んだジャンルカ・ペトラーキは次元をも超える蜘蛛である。可愛さとかけ離れた蜘蛛の「ツンデレ」が必殺になり得るとは到底思えないが、ブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスには効果抜群だったようだ。
愛、私は愛を見た。私が間違っていたであろ。私を許すがよろし。私はそう請うた。
ブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレスは梯子でもなければ縄でもない蜘蛛の糸を登りきり蘇った。ボローニャ戦で途中出場ながらアシストを記録すると、目下リーグ戦2連続スタメンの活躍、お見事。貴方はこれからブルーノ・ダ・シウヴァ・ペレス、通称ブルーノ・ペレスという名の奇跡を目撃することになるだろう。交通事故も起こすが奇跡も起こす男、それがブルーノ・ペレス。好きになるであろ?覚えておくがよろし。
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