トッティの自叙伝「キャプテン魂」発売記念、ゼロ・トップのイタリア語調査報告


2020年3月11日にトッティの自叙伝"Un Capitano"の日本語版「キャプテン魂」が発売されました。これを記念してトッティのゼロ・トップについて考えてみたいと思います。

トッティのゼロトップとは


トッティのゼロ・トップって何?初めて聞いた言葉だよと言う人もいると思うのでトッティのゼロ・トップについて簡単に説明します。当サイト用語集コトバではファルソ・ノーヴェの説明の中で

【ファルソ・ノーヴェ(Falso nove)】=イタリア語で偽9番の意。サッカーの役割の一つ。CFではないタイプの選手を最前線に置くこと。スペイン語でファルソ・ヌエべ(Falso Nueve)。現代サッカーにおいては05/06シーズンASローマを率いていたルチアーノ・スパレッティ(Luciano Spalletti)さんが怪我人が続出しCFがいなかった為、苦肉の策で当時トレクワルティスタだったフランチェスコ・トッティ(Franchesco Totti)を4-2-3-1の最前線に配置したことに端を発し、最前線のトッティが中盤に降りてくることで空いたスペースに2列目の選手が飛び込んでくる4-6-0、いわゆるゼロトップシステムを編み出し、後にトッティの担った役割が偽9番と呼ばれた。古くは1930年代オーストリア代表で故マティアス・シンデラー(Matthias Sindelar)さんや1950年代初めハンガリー代表で故ヒデクチ・ナーンドル(Hidegkuti Nándor)さんがこの役割を担った。ちなみにスパレッティさんは第二次ASローマ政権においても4-3-3の最前線にディエゴ・ペロッティ(Diego Perotti)を偽9番の役割で起用し、ペロッティが中盤に降りてくることで実質的に中盤のひし形の頂点に位置する新たなゼロトップシステムを披露した。

こう説明させてもらっています。

これに少し補足させてもらうと

・トッティのゼロ・トップの始まりは2005年12月18日のサンプドリア戦。サンプドリア戦で当時チームに在籍していたカッサーノ、モンテッラ、ノンダがおらず起用できるCFがプリマヴェーラのオカカ(当時16歳)しかいなかった。


・トッティがゼロ・トップに至るまでのポジション遍歴は

1.トレクワルティスタ or セコンダ・プンタ(セカンド・トップ)としてキャリアをスタート

2.ゼマン監督の下でスリー・トップの左WG

3.カペッロ監督の下でツー・トップのプリマ・プンタ(ファースト・トップ)


こうなります。ゼロ・トップについてはなんとなく分かっていただけたでしょうか?


ゼロトップのイタリア語


これがこの投稿の本題になります。日本ではトッティを4-2-3-1のチェントラヴァンティ(センター・フォワード)に起用したスパレッティさんの戦術はゼロ・トップとして話題になり、以後この戦術の代名詞としてゼロ・トップが定着した感があります。

ではその当時のイタリアでは日本のゼロ・トップのような代名詞があったのでしょうか?

結論をいうと私が調べた限りイタリアでは定着した代名詞は見当たりませんでした。

ファルソ・ノーヴェじゃないの?と思った方もいるかもしれません。けれどファルソ・ノーヴェはそれまでバルセロナのスリー・トップの右WGだったメッシとCFだったエトーの位置を入れ替えメッシをCFとして起用したペップ・グアルディオラ監督の戦術が初登場した2009年5月2日レアル・マドリード対バルセロナ戦を境にスペインで生まれた言葉であり、後にトッティの役割もそう呼ばれだしただけでその当時のイタリアにはなかったようです。


イタリアにおけるファルソ・ノーヴェ以外のゼロ・トップの表現としては


トッティ本人はインタビューで

スパレッティさんの4-2-3-1では僕はプリマ・プンタになったけれどいつも特殊な装い(veste atipica)だった。

と表現していました。


またトッティのゼロ・トップが生まれた後の2006年4月12日のGazetta.itの記事では

il finto centravanti Taddei(イル・フィント・チェントラヴァンティ・タッデイ)

偽CFタッデイという表現が使われていて2013年にはグイドリン監督が

ガルシアさんがトッティをfinto centravantiの役割に戻したのは非常に賢かった。

と表現しており、この表現を用いている記事もありました。


一番多かった表現は

スパレッティさんに4-2-3-1のプリマ・プンタ(またはチェントラヴァンティ)として起用されました。

という感じのものやこれにトッティの発言のように特殊なというような説明をつけ加えたものでした。


まとめ


イタリアでは表現がマチマチでゼロ・トップのように定着した代名詞は特にないようだけれど近年だとスペインで生まれた言葉のファルソ・ノーヴェ(ファルソ・ヌエべ)が用いられることが多い印象があります。



以上です。


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